2007年4月18日水曜日

トータル・システム研究所

昔、阿佐ヶ谷にトータル・システム研究所(TSI)というソフトハウスがあった。私共メソッドの古巣である。1980年代の後半、最盛期には100名ほどのメンバーがおり、ユニークな組織論で一部に知られた会社だった。いや、正確には休眠状態で現存するらしい。・・・今日、そのトータル・システムの元代表のM氏が来訪。さすがに加齢の印象は否めないが、奥多摩で微生物のプラントをたちあげたとか、氏の「めげない元気さ」は健在だった。

だが、なぜTSIはうまくいかなかったのか。バブルの時期には大幅に業績を伸ばし、あちこちのゼネコンから強く提携を申し込まれるほど優秀なプログラマもいた。しかし、バブル期が過ぎた後の数年の落ち込みを乗りきることができなかった。TSIのユニークな組織原則をごく簡単に言うと、数名のグループ制をとり、TSIには各グループの売上げの10%を納めることだけを義務とする、といったことである。社内に小さな会社をたくさん抱えているようなことになる。
【写真】多摩川上流のようす(御嵩付近 2007.4.15)

こんな素朴な規則であっても、業績が右肩あがりのうちはよかった。しかし、その後、売上げが極端に減少した時期には、まったく求心力が働かない状態だった。私たちの(メソッドとなって独立した)グループも含めて、ほぼ3年くらいの期間にTSIは四分五裂状態となった。そして、メソッドはTSIから独立した後、この15年あまり、少なくともグループ制はとらない(そういう規模でもない)、社長が責任を負う普通の組織としてやってきた。

・・・もちろん、ここに書いたことはごくごく大雑把なスケッチである。TSIの組織論(プロジェクト制と呼ばれていた)はひとつの実験ではあったかもしれない。今、それを振り返るだけの価値があるのかどうかも定かではない。

2007年4月16日月曜日

新しいビジネス・コミュニティ・ネットワーク=ポップシンク

直前のご案内になって大変申し訳ございませんが、今週末(4月20日)、以下の要領で第1回ポップシンク勉強会および「ゆひ」設立準備会を開催することと致しました。どうぞ、皆さまのポップシンク、皆さまの「ゆひ」として発足できますよう、万障お繰り合わせの上、ご参集頂きますようご案内申し上げます。

2007年4月20日(金)
 16時~18時 第1回ポップシンク勉強会・・・(株)メソッドにて
 19時~21時 ゆひ設立準備会・・・荻窪駅「はなの舞」(03-5347-9305)にて

以下、第1回ポップシンク勉強会にポップシンクとしてご提案申し上げる内容です。この他に、メソッドとしてすでにアップロードしたコンテンツ、準備中のコンテンツをお示しして議論を進めたいと考えております。ご参加をご検討の皆さまにも、ぜひ前向きなご意見を頂きたくお願い申し上げます。

1.ポップシンク・・・発想の背景

社会公共分野のコンサルタントは、通常、その業務を通じて社会のあらゆる方面に通暁しているものです。そればかりではありません。1970年代以来、私たちは、常に社会の先端、未開拓の分野に関わることで自らの道を拓いてきました。産業立地、都市開発、商業計画、環境分析、福祉介護、教育や文化施策・・・と、時代が進むにしたがって、そのメインとなる分野も大きく変化してきました。

ところが、今、その私たちにとって、経営上、大変厳しい状況が訪れています。その原因は、何よりも、主要な顧客である市町村などの行政団体が、深刻な財政危機に陥っていることです。施策の基礎となる地域の調査や計画検討に相当の予算を準備することが難しい状況です。またこれに対応して、経営が苦しくなったコンサル会社が極端な安値受注に走る現実もあります。先週、名古屋市において、国民健康保険組合としての新しい事業計画策定に関連する業務委託を、概ね予想される水準の約4分の1で入札したコンサルタント会社がありました。もちろん、こんなことは昔も今もけっして珍しくありません。

しかし、大手のシンクタンク企業はともかくとして、このような安値競争に巻き込まれて、生き残ることができる専門コンサルはありません。こうしたことから、私たちは、最新のウェブ環境を充分に利用して共同のプロモーションの場を創造し、新しい顧客層を獲得していこうと考えました。

2.新しいウェブ環境と専門コンサルタント

この数年のウェブ環境の進化のスピードはますます速くなっています。ブログの利用者は国内だけで1千万人とも言われ、ミクシィなどSNSといわれるサービスの成長も急速です。とくにユーザが少し手を入れるだけで体系的なサイトを構築することができるブログシステムは大変魅力的です。また、実に多様なSNS的サービスが毎日のように生まれつつあります。

私たち専門コンサルにとっても、きわめて刺激的なウェブ環境が到来したと言えます。今日、私たちは、求めるテーマについて多くのかなり詳しい情報をウェブ上で得ることができるようになりました。そして、実際にもほぼ毎日こうした情報をチェックしながら、仕事を進めています。もちろんウェブ上には根拠のあいまいな情報、誤った情報が少なくないことは事実です。しかし、情報の真贋を見分けることもまた私たちの仕事であれば、力量のあるコンサルタントにとって、実に面白く、かつうかうかとはしていられない時代がやってきたということになります。

3.クライアントに「直接のプレゼン」ができる、また「定価主義」について

この投稿の末尾に示した別表をご覧下さい。これは、メソッドが開設している「特定健診・特定保健指導研究フォーラム」というブログサイトの数日間のアクセスログを集計したものです。3月末に、厚生労働省が、このメタボリック・シンドローム対策の計画ガイドラインを発表すると、このサイトへのアクセス数はそれまでの数倍に跳ね上がりました。「特定健診」「特定保健指導」などのキーワードで検索すると、このサイトが比較的上位にランキングされるためです。

特定健診・特定健康指導研究フォーラムのトップページ

サーバ名から、市町村(国保)担当課からと思われるアクセスが少なくないことがわかります。全国や地域の保健・保険関連団体・企業、医療機関、製薬会社、システム関連企業、また、福祉系の学校と思われるサーバ名もあります。数千万人の健診、生活習慣病対策が根本から変わろうとしている時に、それぞれの立場の数多くの人々が最新の情報を求めて検索を行っているのです。

ここで、市町村の国保担当者はどのような情報を求めてこのサイトにやってきたのでしょうか。もちろん、その正確なところは、このログだけからはわかりません。しかし、もし今、私たちがこのサイトに「国民健康保険組合としての事業計画づくりに役立つ情報」を適切に掲載すれば、メソッドに対する信頼が大変大きくなることは確実だろうと思います。場合によっては、問い合わせが来るかもしれません。引き合いがくる可能性もなきにしもあらずです。

要は、適切な情報をタイミングよくサイト上に掲載しておくだけで、その情報を求める全国の「見込みクライアント」の机上に、最少の費用である意味で「プレゼン」と同等の情報を届けることができるということです。ここで「適切な情報」が何であるのかについては、もちろん大いに研究の余地があります(本日-4月20日-の勉強会の目的もそこにあります)。少なくとも、具体的であること、わかりやすいことなどは必須であろうと思います。また、特にサービス情報について、サービスの提供価格を(概ねでもよいから)明示する、ということも非常に大切な点だと考えています。これをポップシンクの「定価主義」として原則化することがよいかも知れません。

もちろん、もし引き合いが来ても、自治体の場合は、そこから入札やコンペなどが始まり、それはそれで大変かもしれません。しかし、さらに言うならば、ここでやってくる「見込みクライアント」が誰なのか、それをあらかじめ言うこともできないのです。意外なところから仕事がくるかもしれません。ポップシンクは、むしろそうした想定外の新しい顧客層の開拓を基本的なねらいとしているのです。

4.誤魔化しは不可能、ハッタリや情報の囲い込みは意味がない

こうしたウェブ上の情報の展開を、広告の延長でとらえると本質を見誤ります。広告で展開できる情報量は限られます。また、広告は企業から消費者/クライアントへという一方通行を前提としたものでもあります。マスコミを媒体とする広告の場合、高額な宣伝広告費を投じても、注目を集めるのはごく一部に過ぎません。これに対して、ウェブ上で具体的に展開される情報量は膨大です。しかし、膨大ではあっても、消費者/クライアントは、検索の力を利用して必要とする商品・サービス情報に直接アクセスしてきてくれるのです。

しかも、専門コンサルの力を必要としている行政や企業の担当者は、一般の商品を探す消費者と同様に、求めるテーマについて必要な情報をあらゆるサイトをまわって集めます。提供する情報の内容を誇張したり、具体的でなかったりすれば、そのサイトは見向きもされません。逆に言えば、あくまでも正確かつ客観的な情報、具体的でわかりやすい情報、クライアントに役にたつ情報を展開していけばいいのです。クライアントが、このサイト(サービス)がベストと判断するかどうか、・・・この点にすべてはかかっています。

また、単なる情報の囲い込み(小出しにすることを含めて)は意味がありません。今という時代では、誰かが囲い込んだ情報と非常によく似た情報を、すぐに別の誰かがウェブ上に展開するでしょう。誰かが「価値ある」情報を持っていることをクライアントが知る前に、その誰かはその情報と共にウェブの大海に沈没するしかなくなります。

5.ビジネス・コミュニティ・ネットワーク

インターネットを利用してプロモーションを行うという意味では、サイトの信頼性をいかに確保するかという点が、もっとも大切です。ウェブ上で情報を展開し、クライアントの信頼を勝ちとるためには、まず、その情報自身の正確さ、具体性、タイミングのよさなどが問われます。しかし、それを補い、より高い信頼性を確保する方法があります。それは、ウェブ上の情報を、リアルのネットワーク、リアルのビジネス・コミュニティと丁寧に結びつけていくということです。・・・いや、逆かもしれません。あくまでもリアルのネットワークがあって、その共同プロモーションとしてポップシンクがあると考えるべきでしょう。

つまり、ポップシンクは、ウェブの力を最大限に利用して、実際の専門コンサルタントの広汎なネットワークを築いていこうとするものです。したがって、参加される皆さんは、どうぞコミュニティとしてのさまざまなコラボレーションを自由に創造していって下さるようお願い致します。お互いが啓発しあう、刺激しあう試みをたくさんご提案、そして実践して頂きたいと思います。私たちがポップシンクという場で、イキのよい専門コンサルタントとして活躍する時、社会もまた広く私たちの力を信頼し、そして、活用しようとするに違いありません。

6.目標とするコミュニティの規模と業種ミキシング

メソッドは、社会公共系分野をメインとして、1990年代からシンクタンクと建設コンサルの間で活動してきました。しかし、ポップシンクでは、コンサルタントという仕事の意味をもっとも広く捉えたいと考えます。専門コンサルの方々はもとより、弁護士、会計士、医師、あるいは企業や行政団体で企画や経営に携わる方々、さらには大学などの研究教育機関で活躍される方々など、広い意味で専門技術や情報を扱い、人々とコミュニケーションを通じてそれぞれの職責を果たしていくすべての専門家、実務家の皆さんのネットワークを目指します。・・・知的フィールドに関わる方なら誰でも参加できる「みんなの/ポップシンク」なのです。

私たちは、このように基本分野を越えた専門家のネットワークという点に大きな意味があると考えます。これは異業種交流という考え方ともやや違います。「研究」という未知の領域に接しながら、実践的あるいは実務家として日々知恵を絞る人々のネットワークということになるでしょうか。
これまでも、例えば医療関係者だけのSNS、また、ネットを利用した法曹界のさまざまなグループ、あるいは、ミクシィのような巨大な電子ネットワークもあります。しかし、こうした特定業種のネットワークには、同業であるが故に知的な刺激が足りませんし、他方、巨大SNSを営業上のプロモーションには使えません。何よりも、ポップシンクは、業界団体、ギルドをつくろうとするものではないということです。

規模については、お互い「顔のわかる規模」・・・最終的にも、せいぜい3,000人程度を考えています。小規模だけれども、レベルが高く、そこで展開される議論やコミュニケーションのスタイルが非常に広汎な社会的影響力をもつ、・・・これがポップシンクが目指すコミュニティです。

7.ブログシステムの活用

もしポップシンクが発展した場合には、ある程度のシステム投資を行って、専用サイトを構築することも検討課題になるかもしれません。しかし、当面の時期は(グーグルなどの)無料サービスを利用していきたいと思います。

したがって、ポップシンクのウェブシステムは、参加する皆さんがつくる大量のブログの束、ということになります。そこにどのようにリンクの網を紡ぎ、わかりやすくセグメント化するか、そういった点も、相互に研究しながらサイトを創りあげていきたいと考えます。

8.事業規模の見通し

先日の『これからの「普通の会社」のつくり方』に、「ポップシンクの3年後の目標は、参加企業20社、取扱高10億円、売上げ5,000万円(取扱高の5%)、経常利益1,500万円、・・・程度を想定」と書きました(3月29日)。今のところ、これを訂正する理由は出てきていません。同時に、こうした規模と言いきる根拠も(正直に申して)さほどしっかりしている訳ではありません。すべては、ここからの私たちの頑張りにかかっている、ということになります。
どうぞ、よろしくお願い致します。
(文責・株式会社「ゆひ」準備会/千葉)


(補注)以上のテキストは2007年4月16日に公開後、準備会(メソッド)での議論を踏まえて、一部修正を行ったものです。

(別表)



2007年4月5日木曜日

P=ブログについて

★ ポップシンクのトップページ(案)
ポップシンクのひとつの参加の形として、P=ブログ(ポップブログ)を提案したいと思います。ここでP=ブログと名づけるブログ分野は、ビジネスブログないしNPO的ブログの全体(ソーシャル・ブログというべき?)とイメージしています。

先日、「ゆひ」の設立趣意書についてメールで頂いたご意見として、古い友人であるSさんが、つぎのように書いておいでです。

 ・・・「コンサルタント」と言う用語は難しいですね。例えば☆☆コンサルタントと名乗る方で、サービス内容に疑問なものも少なくないようです。他に適用な用語が見当たらず、私もコンサルタントと自称することがありますが、悩ましいです。・・・

まったく、その通りですね。しかし、これは、ある意味で止むを得ない面があるような気もします。ところで、コンサルタントという仕事にもさまざまな分野がありますが、どのようなテーマに係わるにしろ、私たちは「社会」という無限のつながりのなかで活動している訳で、とくにコンサルタントには、あらゆる方面の一般知識に精通していることが求められるといえるでしょう。

ですから、P=ブログは、あえてビジネスブログに限定せず、私たちが広い意味でのコンサルタント(広く専門家としての助言を業とするもの)として関心を持つすべてのテーマ、問題に関して自説の展開、他説の評価を自由に行っていく場としたいと考えております。

なお、ブログは基本的に「深堀り」です。このため、P=ブログは、ポップシンクのコミュニティ・ネットワークの「横つながり」を強くすることでサポートされる必要があります。こうした「広場」的役割りをもつ場についても設定、充実させていく方針です。

どうぞP=ブログへの皆さまのご参加をお願い致します。

【P=ブログの参加方法】
P=ブログの趣旨から大きく逸脱しないブログを展開してください。皆さまの活動実績を具体的に展開することを含めて、営利/非営利を問わず、また内容は自由です。次のいずれかの方法でご参加ください。

★A ・・・ すでに皆さまが書いて来られたブログをP=ブログに参加させる
  お申込み頂ければ、ポップシンクのロゴ(コード)をお送りしますので、そのブロ
  グのサイドバーなどに貼りつけて下さい。
★B ・・・ ポップシンク運営事務局でブログを設定し、皆さまにお書き頂く
  この場合、2人以上が交替で書くチームブログにすることもできます。テーマや更
  新方法等について、運営事務局が丁寧にフォロー致します。

いずれの場合でも、ポップシンクのP=ブログリストに簡単な紹介文と共に掲載し、そのブログへのリンクを設定させて頂きます。以上、お申し込み、ご連絡をお待ち致します。